小児の漢方療法



最近のお子さんの病気の症状は、多様化し複雑化しています。
 今までのお薬では対応出来ないケースもみられています。
 このような時には、漢方薬が意外に効果を発揮することがあります。
 漢方薬も最近のものは、以前のものに比べて飲みやすくなっています。
 お困りのお子さんがいらっしゃる場合は、ご相談下さい。
 以下に当院でお子さんに効果が良かった漢方薬と病気についてお話します。




※ツムラ柴苓湯 (サイレイトウ)




アレルギー性(血管性)紫斑病(シェーンライン・ヘノッホ紫斑)に効果があります。
紫斑病は主に足の前面に赤紫色の出血斑(紫斑)がみられる病気ですが、強い腹痛や強い関節の腫れや痛みが
出てくることがしばしばあります。入院を必要とすることが多い病気ですが柴苓湯とステロイドの内服を服用しますと外来でも治ることがあります。



※神秘湯(シンピトウ)



お子さんの「ぜん息」に良く効きます。
特に「ぜん息発作」がひどい状態や「ぜん息発作」が少し改善した状態のどちらにも効果があります。
「ぜん息」のお子さんは、精神的にもデリケートでぜん息発作を起こしますと元気がなくなる傾向がありますが、このお薬はその部分を補って元気を出してくれる効果ももっています。





※六君子湯(リックンシトウ)



食欲や元気が何となく無い状態のお子さんに内服していただくと症状がとても良くなります。
お腹の調子がすぐれず、精神的にも気力が不足しているお子さんに適している漢方薬です。




※芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)



お子さんで下肢の震えがみられることがありますが、これは下肢の筋肉の痙攣のことがあります。
この状態を「ムズムズ病」や「レストレス症候群」といいまして下肢の震えや痛み・ムズムズ感・違和感の症状が出ます。
お子さんはとても気になります。このような時に芍薬甘草湯を飲んでいただきますと、この薬の中に筋肉の痙攣を抑える成分が入っていますので劇的に効果があります。




※治頭瘡一方(ヂヅソウイッポウ)



お子さんで体の中で部分的に痛みが強い場合に、その痛みを改善するのにとても効果があります。
例えば自転車に乗っていて転んで怪我をした場合に、骨折はないけれども腕に部分的に腫れや痛みや圧痛が強い時には痛みを改善する薬として良く効きます。
リンパ節炎でリンパ節が腫れてとても痛くて圧痛強い時も同時に良く効きます。
頭痛にも効果があります。腫れた事による痛み(腫通)にとても良く効くお薬です。





※越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)



お子さんのアレルギー性鼻炎(花粉症)で、すでにお薬を飲んでいるにもかかわらず鼻づまりの症状が強くて夜眠れないお子さんに内服していただくと、とても良く効きます。
もちろんお母さん方で同様の症状の方にも良く効きます。
鼻づまりがひどいアレルギー性鼻炎(花粉症)では、鼻の中の粘膜の腫れがとても強いので、この腫れを改善する成分が越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)に入っていますので効果があるのです。





※荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)



お子さんのお肌に発赤や傷、膿みがみられる時にそれらを改善するのによく効きます。
例えば

@アトピー性皮ふ炎でお肌に発赤が見られていて、ひっかき傷がひどく膿みを伴った「とびひ」を合併しているお子さんがこのお薬を飲みますと、お肌がとてもよくなります。
特に顔のひどい重症のアトピー性皮ふ炎で効果があります。

A副鼻腔炎(ちくのう症)が治りにくいタイプのお子さんにとても効果があります。
副鼻腔炎では、鼻の中の排膿と粘膜組織の修復が重要ですが、このお薬はその働きを担っています。
鼻水が治りにくく、鼻粘膜に膿みがついているような鼻炎にも効果的があります。



※白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)



お子さんの皮膚に強い発赤がみられた場合にとても効果があります。
例えば、
@赤ちゃんで顔や眼の周囲の発赤が強いアトピー性皮膚炎のお子さんに大変効果があります。
Aツムラ消風散(22)を飲まれても改善しない皮ふの発赤にはこのお薬が効きます。
B皮ふに発赤が強くみられますと、お子さんはその部分がとてもかゆくなり、結果として皮ふのかきこわしが起こってしまいお肌がなかなかよくなりません。



※消風散(ショウフウサン)



お子さんの肌の発赤を改善して、お肌の傷や乾燥状態を改善する効果があります。
例えば、
@アトピー性皮膚炎で赤みの強い発疹と乾燥した発疹とかきこわれの傷の発疹がみられる場合によく効きます。
Aじんま疹や多型滲出性紅斑(特殊なじんま疹)で、お肌の発赤が強いお子さんに非常に効果があります。





※小柴胡湯(ショウサイコトウ)



「過換気症候群で胸が苦しく息ができない時」や、「喉のつかえ感が取れなくて気になる」など、胸の自覚症状が強いお子さんに効果があるお薬です。
胸の様々な症状は、一種のストレスから症状を訴えていることが多く、元気がなく少し落ち込んでいる状態の時に出やすい傾向があります。
お薬でお子さんの心の負担を早く楽にしてあげることが大切です。







※四物湯(シモツトウ)

当帰芍薬散より効果を高めたお薬です。
肌の乾燥や重症のアトピー性皮ふ炎に効果があります。
肌に潤いをもたらす効果が優れていて、乾燥が強いタイプのお子さんに適しています。







※桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

体やお腹の中など、部分的に血流の良くない状態のお子さんに効果があります。
例えば、元気はあるけど何となくお腹が痛い、体調が良くない時に歯ぐきが腫れる、足が冷たいなどの症状のお子さんに効果的です。
お腹の痛みの特徴として、おへその上や下側、斜め下側を痛がったり不快感があったりします。







※当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

「爪が割れやすい」「皮ふがカサカサと乾燥しやすい」「しもやけ」といった、指先や爪の血行が不十分なときに飲んでいただくと効果があります。
体の末端はもともと血流があまり良くない所ですが、最近のお子さんはこの部分の血流がさらに不十分となっているために、爪や皮ふの症状が出るのです。
これらの症状はぬり薬だけでは改善しませんので、内服薬がおススメです。
アトピー性皮ふ炎のお子さんに飲んでいただきますと、何より皮ふにうるおいが出て、改善がみられます。
また、頭皮の血流が不十分なタイプの円形脱毛症にも効果があります。





※麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)

ぜんそくの症状が重く(咳がひどい、咳込んで嘔吐する、呼吸困難があるなど)気管支が腫れている時に、この腫れをとるお薬です。
お子さんのぜんそく発作が急速に重くなった時に飲むと効果があります。
特に点滴治療が必要になるような重症のときに飲んでいただくと、症状が速く改善します。
このお薬は、短期に5〜7日程併用するだけで大丈夫です。






※麻黄湯(マオウトウ)

インフルエンザなどの感染症で急激な発熱や、寒気がある時に飲むと効果があります。
発汗を促進して解熱させるお薬なので、発熱の初期に飲みますと、1〜2時間後に汗をたくさんかいて熱が下がります。






※葛根湯(カッコントウ)

麻黄湯と同じような症状の時に飲むお薬ですが、上記の症状に加えて首が凝る、首が痛いなどの症状がある場合には葛根湯のほうがより効果的です。
胸や背中の痛み、頭痛が一緒にみられる時にも効果があります。




※麦門冬湯(バクモンドウトウ)

・主に症状の改善の難しいタイプの「ぜん息」や「咳ぜん息」に飲んで頂くと効果があります。
飲み始めの早い段階から咳の症状が著明に改善します。
・ぜん息の飲むお薬(ロイコトリエン拮抗薬:キプレスやオノンetc)や吸入ステロイド薬を
併用すると効果があります。
・乾いた咳のぜん息のお子さんに適しています。


※五苓散(ゴレイサン)

・下痢や嘔吐の胃腸炎の時に飲んで頂くと効果があります。
特に嘔吐の多い胃腸炎では良く効きます。
胃腸炎で喉の渇きがあるお子さんに良く効きます。
・細菌性の胃腸炎では、胃腸炎の抗生剤と併用して飲んで頂くと効果があります。
・おしっこが近い頻尿や夜尿のお子さんに効果があります。
・なかなか治りにくい慢性頭痛のお子さんに効くことがあります。



※甘麦大棗(カンバクタイソウ)
・夜泣きの赤ちゃんや小さいお子さんに良く効きます。
甘いお薬なので小さいお子さんでも飲めます。
・寝つきの悪いお子さんや睡眠のリズムが少しズレてしまっているお子さんにも効果があります。
・落ち着きのないお子さんにも効果があります。
・このお薬で症状の改善の少ないお子さんは、次の抑肝散(ヨクカンサン)が効果があります。




※抑肝散(ヨクカンサン)
・夜泣きのひどいお子さん(例えば甘麦大棗が効かないタイプのお子さん)に良く効きます。
・落ち着きのないお子さんに効果があります。
・夜よく寝つけないなどの睡眠のリズムが乱れたお子さんに効果があります。
夜寝るのが遅いお子さんは興奮していることが多いので、このお薬で興奮をしずめてあげると、睡眠の質が改善します。
お子さんは早寝・早起きがベストな睡眠リズムです。
・オシッコが、やたら多いお子さんも効果があります。
(例えば一時間に6回くらいオシッコに行く、今オシッコをしたばかりなのに、またすぐにオシッコに行く)などのお子さんに効果があります。
・難治性のじんま疹に効果があることがあります。
通常の難治性じんま疹のお薬で効果がないお子さんに使用すると効果が出ます。
この場合、通常の難治性じんま疹の飲み薬に追加すると効果が良い印象をうけます。
・かんが強すぎて、お母さんの言うことを聞けないお子さんや反抗ばかりしてしまうお子さんにも良いでしょう。



※黄耆健中湯(オウギケンチュウトウ)
・水イボを繰り返しているお子さんに飲んでいただくと水イボの増えるのが止まります。
水イボの数がやたら多いお子さんにも効果があります。
薬で水イボが増えるのを抑えておいて、今ある水イボを摘除して取り去るのが良いようです。
・円形脱毛症のお子さんに著明に効く場合があります。
このお薬が効くタイプおお子さんは、飲み始めの比較的早い時期(2週間目くらい)から改善がみられますが、長めに服用します。この場合も外用薬の併用も必要です。
・アトピー性皮膚炎で効果があるお子さんもいます。
・アレルギー性鼻炎に効果があります。




※大建中湯(ダイケンチュウトウ)

・便秘のお子さんに効果があります。特に「裂肛」(レッコウ)と言って肛門のところに放射状の亀裂が出来るタイプの便秘は重いことが多いので服用してみるとよいでしょう。
・通常の便秘のお薬と併用しても大丈夫です。
・おしりのところに出来る突起物で「見張りダコ」というものがみられることがありますが、この場合も便秘があるといきんでしまい「見張りダコ」がかぶれたり傷ついたりするので、その予防に効果があります



※小建中湯(ショウケンチュウトウ)
・もともと体の弱い、虚弱体質のお子さんに効果があります。
・よく「お腹が痛い…」と頻繁に訴えるお子さんのお腹の痛みを改善します。
・体重の増えが良くないお子さんの体重を増やす効果があります。
・食が細いお子さんの食欲を増進させる効果があります。



※十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ)
・赤ちゃんのおしりの周囲に出来る「肛門周囲膿瘍」というオデキのようなものがありますが、この場合に服用すると改善します。「肛門周囲膿瘍」は再発を繰り返しますと、症状によっては手術が必要になります。早めにこの薬を服用して治すことが大切です。





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