新型インフルエンザ流行とその対策
日本小児感染症学会
〜けいゆう病院 菅谷憲夫先生 講演より〜
新型インフルエンザは・・・
〜ニューヨークでは〜
高齢者に流行はおきていません。(高齢者の死亡数は少ない傾向にあります)
死亡数が少なくても、季節性インフルエンザより、はるかに重症のインフルエンザの流行であることには間違いありません。
喘息や慢性の肺の病気を持つ患者さんが多くみられます。
小児の入院が多い傾向があります。(2歳未満が14%、5歳未満が24%)
健康な小児や成人でも、入院が多くみられます。(21%)
〜オーストラリアでは〜
小児・10代・20代を中心に流行がみられ、平均年齢は21歳です。
入院は45歳が多く、死亡は53歳が多くみられます。
今後、40〜50歳代の壮年層の重症例が増えてくる可能性があります。
新型インフルエンザの流行は、「若い人の病気」で、「こどもの病気」ではありません。
死亡者は、高齢者に多くみられます。
40〜60歳の入院患者さんの死亡例が多くみられます。
今後、日本でも40〜50代の壮年層に死亡例が多くなる傾向が心配されます。
入院例の49%がウイルス性肺炎で、20%が細菌性肺炎の合併がみられます。
入院の3%は基礎疾患が全くなく、重症例の65%が人工呼吸器の使用を必要として、このうち12%がECMO(体外循環治療)を必要としました。ECMOを治療に使える病院はかなり限られており、最も重症な患者さんに使われる治療法です。
WHOの目的は、「タミフルやリレンザを使用して、新型インフルエンザの重症化と死亡を防ぐこと」であり、さらに「入院を減らして、入院期間を短くすること」です。
重症例では、全ての患者さんにタミフルで治療が必要です。
「10代の肺炎の重症例」は、全てタミフルで治療すべきです。
肺炎が重症だと、リレンザが上手に吸入できないので、内服のタミフルの方がよいことになります。
軽症例でも、ハイリスクの患者さんは全例治療すべきです。
(この場合は、リレンザでもタミフルでも、どちらでも構いません。)
ハイリスクは〜
・5歳未満の幼児
・高齢者
・慢性の呼吸器や心臓や肝臓などの病気を持っている患者さん
などになります。
健康な小児や成人でも、早期に(発熱後48時間以内)リレンザやタミフルで治療を開始すべきです。
重症例の4%以上は、健康な小児や成人です。
どの患者さんが重症化するのか、予測がつきません。
発症当初に軽度の患者さんでも、3〜5日目に肺炎を合併して重症化しています。
現在の日本では、新型インフルエンザ発症者の10万人に1人が死亡したことになり、死亡者数は、世界的に見て極めて低い傾向にあります。これは、日本が世界の中で最も早く、新型インフルエンザに対するリレンザやタミフルの治療を早期に開始していることによります。
日本の死亡者数は、50歳以下の若い人に多くみられます。
新型インフルエンザワクチンは、流行しているウイルスから作ったものなので、新型インフルエンザに対しては、かなり有効と考えられます。
細菌性肺炎を合併した新型インフルエンザの患者さんは、ICU(集中治療室)に入った患者さんの20〜50%を占めています。
重症例では、タミフルの他に、抗生物質の同時投与が必要です。
新型インフルエンザでは、迅速診断キットの感度が、季節性インフルエンザに比べて低いので、迅速診断キットでインフルエンザ感染の反応がみられなくても、臨床症状から診断して、リレンザやタミフルのお薬を早期に開始することが重要です。
高齢者の方では、肺炎球菌ワクチンを接種して、肺炎の予防に努めることも重要です。
小児でも、肺炎球菌ワクチンを接種できると、やはり肺炎の予防につながり、有効となるでしょう。
(小児の肺炎球菌ワクチンは、日本での認可がおりましたが、実際に接種できるのは、2010年の春ごろになる予定です。)
新型インフルエンザは「重症化を防ぐために」タミフルもしくはリレンザは、5日間の治療が必要です。
(熱が下がったからと言って、3日間の治療では、重症化を防ぐことができません。)
発熱がみられた1日目でも、「元気があれば」翌日に医療機関を受診しても良いでしょう。
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