小児の局所の感染症と漢方治療


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@小児の肛門周囲膿瘍
 赤ちゃんによく見られるのおしりの病気として「肛門周囲膿瘍」という皮膚の局所の細菌の感染症があります。
 「肛門周囲膿瘍」は男の子に多くみられ、生后6ヶ月未満の赤ちゃんが大半を占めます。
 肛門の周囲に黄色の膿みのたまった赤い膿瘍が肛門周囲の6AMか3PMの方向に腫れてみられます。
  A)十全大補湯
  「肛門周囲膿瘍」には「十全大補湯」という漢方薬がよく使われます。
  「十全大補湯」は「四物湯」と「四君子湯」と桂枝と黄耆の生薬で構成されています。
  「四物湯」は補血剤で「血虚」を改善します。血の巡りが良くなくて栄養がいかないで組織が痛んだ状態「血虚」を改善する作用があります。
  例えば、指先や皮膚や爪などの末梢に多くみられる爪がわれたり指先がわれたり指先が乾燥したりする「血虚」の状態を改善します。
  「肛門周囲膿瘍」は「血虚」で出来上がった病気ですので、四物湯がこれを改善する働きがあります。「四物湯」には「芍薬が入っていますので肛門周囲膿瘍の痛みでお腹がつっぱるのを軽減してくれます。
  「四君子湯」は補気剤で「気虚」を改善するお薬です。また補脾剤で「脾虚」を改善するお薬でもあります。
  「気虚」と「脾虚」は合併していることが多くあります。「気虚」がありますと食欲がない、食べられない、下痢をしやすい、食が細いなど脾の働きが良くない、消化管の消化吸収能力が良くないことになります。人間は食べることでその効果として体の様々な漢方的な症状が改善するようになっています。「脾虚」が改善されませんと「脾虚」以外の症状(血虚)も良くなりません。
   十全補湯は、四君子湯で「気虚」と「脾虚」を同時に治すことで「血虚」の症状もより改善しやすくなっている漢方薬なのです。十全大補湯に入っている黄耆も皮膚を改善します。十全補湯は再発生を繰り返す肛門周囲膿瘍にも効きます。
   使用目標は完全に膿瘍が消失するまでですのでかなり長期の内服でも大丈夫です。
  B)排膿散及湯
  「肛門周囲膿瘍」で発赤と膿みと腫れが特に著明な場合には「十全大補湯」よりも「排膿散及湯」の方が良く効く場合があります。
  「排膿散及湯」という漢方薬は発赤があって膿みがたまった状態の膿みを排出させて症状を改善させる「桔梗」や「枳実」といった排膿作用のある生薬成分が入っています。ですので「肛門周囲膿瘍」だけではなく局所に膿みがたまって発赤のある状態でしたら「排膿散及湯」ほ良く効きます。例えば扁桃腺やにきびや蜂窩織炎にも効きます。
Aニキビ・ニキビ様皮フ炎
  A)排膿散及湯
   お子さんのなかなか治らない難治性のニキビやニキビ様皮膚炎に良く効きます。
   使用の目安はニキビやニキビ様皮膚炎でみられる膿栓(膿みのかたまりが丸く集まったもの)が多く多発していて皮膚に赤みがあれば排膿散及湯を使用しますとよいでしょう。
   「排膿散及湯」は皮膚にたまった膿みを外側に排出させる排膿作用をもつ生薬成分であります。「桔梗」や「枳実」を含んでおりますので良く効きます。もちろんミノマイシン(抗生剤)の併用をしますと更に早く改善がみられます。
   使用目標はニキビやニキビ様皮膚炎が完全に消失するまでですので数ヶ月の長期内服が必要になることも十分あります。
B副鼻腔炎(蓄膿症)
  A)「荊芥連ギョウ湯」
   難治性の副鼻腔炎には、「荊芥連ギョウ湯」がとても良く効きます。通常の副鼻腔炎の治療をしても全く治らないお子さんに良く効きます。
   「荊芥連ギョウ湯」の構成生薬の「四物湯」は血虚を治す補血剤で血液のめぐりを良くして痛んだ状態の副鼻腔や鼻の中の組織を修復して改善させます。
   「荊芥連ギョウ湯」の構成生薬の「黄連解毒湯」は副鼻腔や鼻の中の炎症の熱をさます作用があります。
   「荊芥連ギョウ湯」の構成生薬の「桔梗」や「枳実」は排膿させる作用をもっています。これらが組み合わさって排膿、清熱、修復を行うわけです。
   使用目標は症状が消失するまでですので1〜3ヶ月位かかるお子さんもいます。
C扁桃炎
  A)小紫胡湯加桔梗石膏
   喉が痛い扁桃炎に良く効きます。構成生薬は小紫胡湯に次の2つの生薬が加わったものです。
   真っ赤にのどが炎症をおこしているのを冷やす作用のある「石膏」と扁桃の膿みを排出させる排膿作用のある「桔梗」が加わったのが小紫胡湯加桔梗石膏という漢方薬です。喉が真っ赤で扁桃炎に膿が付いている状態のお子さんに良く効きます。
   使用目標は大体1週間です。

  B)排膿散及湯
   喉の痛みよりも扁桃腺に膿栓(膿みのかたまり)が多数みられる扁桃炎のお子さんに良く効く漢方薬です。
   構成生薬の「桔梗」と「枳実」に排膿作用がありますので膿みがたまった扁桃炎に良く効きます。
   使用目標は大体1週間です。

D蜂窩識炎 
  A)白虎加人参湯
   お子さんの皮膚の局所に細菌感染が起きて、その炎症が広範囲に皮膚の深い所まで見られてくるのが蜂窩識炎ですが、発赤、熱感、腫張、圧痛が強いのが特徴です。
   構成生薬の「石膏」が強烈に冷やす作用のあるお薬ですので、蜂窩識炎の強い発赤と熱感を冷まして改善してくれます。通常は1週間くらいの内服で十分です。 
   抗生剤と併用するのが良いでしょう。
E面庁
  A)排膿散及湯
   お子さんの皮膚の局所に強い細菌感染を起こしてその炎症が強く皮膚が真っ赤になって熱感と腫張が激しい場合に「排膿散及湯」が良く効きます。特に顔面に出来たお子さんの「面庁」には良く効きます。
   使用目標は赤みが完全にとれるまで少し長目に2〜4週間使用しても良いでしょう。


  



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