小児の下痢と漢方治療


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小児の下痢と漢方治療

@小児の下痢ではいくつかのポイントがあります。

1)口渇(のどのかわき)があるかどうか。
2)吐き気があるかどうか。
3)冷えがあるかどうか。
4)下痢に出血を伴なっているかどうか。
5)重症の下痢化かどうか。
6)舌が渇いているかどうか。
上記の点に配慮しながら次のような漢方薬を選択していきます。


A五苓散(ゴレイサン)
1)下痢をしている時はお子さんのお腹の中の水回りが乱れています。
下痢は体の中の水分が腸に集まってきてそれが外に出てきたもので、これを「水毒」といいます。
「水毒」がみられていて、お子さんに口渇(のどのかわき)がみられている時に効くのが「利水剤」である五苓散です。
五苓散は「茯苓」と「蒼朮」と「沢瀉」と「猪苓」という主に水まわりを改善する生薬成分が含まれています。
「茯苓」は目眩(めまい)や動悸(どうき)に効きます。
「蒼朮」は四肢の痛みや胃がポチャポチャという「胃内停水」に効きます。
「沢瀉」は目眩(めまい)や頭がしめつけられるような帽子を頭にかぶったような感じの「頭帽感」に効きます。
「猪苓」は熱を繰り返す下痢に効きます。
これらの成分があわさって「水の捌き方」に効を奏するのです。
五苓散の使用の1つ目のポイントは口渇(のどのかわき)がある下痢です。口渇(のどのかわき)があるということは「利水剤」の五苓散を使用できる指標です。
2つ目のポイントは舌が渇いていない「水毒」の特徴があるということです。もし、舌が渇いている時には「脱水症」ですので「利水剤」の五苓散は点滴などの脱水症の治療と併用して行わなければなりません。
2)五苓散の注腸療法
お子さんが下痢や嘔吐や悪心の症状が強い時には「五苓散」をお湯に溶かしてチューブでお尻の穴から注腸をする方法がとても有効です。
注腸療法は、
A)症状の改善が早いことです。注腸してから15分程度で症状の改善がみられます。
B)嘔吐の回数が多かったり、悪心や腹痛の訴えが強いお子さんでは、注腸療法により嘔吐が止まったり、悪心もなくなり腹痛も消失します。
C)顔色不良なお子さんや元気がないお子さんでは注腸療法後に著明に症状が改善して元気になります。
D)「五苓散」の内服が苦手なお子さんでも行なえる治療法です。
E)腸雑音の亢進が著明な嘔吐や下痢のお子さんでは注腸療法をしますと腸雑音の亢進が短時間で消失して症状も改善します。


B猪苓湯
口渇(のどのかわき)があって、悪心がなくて、下痢の症状が重い時に効きます。「猪苓湯」の生薬成分には「猪苓」「沢瀉」「茯苓」という「五苓散」にも含まれている「利水剤」が入っていますので、「水毒」の下痢に効きます。
また、生薬成分の「阿膠」は止血剤の作用がありますので、出血を伴なう下痢や感染症胃腸炎(食中毒)のひどい下痢に良く効きます。さらに、「阿膠」はその止血作用から「出血性膀胱炎」にも効きます。さらに、生薬成分の「滑石」は強力な静熱剤ですので熱を繰り返す下痢にも良く効きます。
使用のポイントはお子さんの口渇(のどのかわき)があって悪心がなくて舌が乾いていない「水毒」の所見があり、さらに血便や血尿を伴なう下痢に使用しますと良いということです。
五苓散に似た「水毒」ですがさらにより重い下痢に使用するとよいかと思います。出血していなくても水様性の下痢がひどければ良く効きます。

C半夏瀉心湯
口渇(のどのかわき)がみられていない、悪心のある下痢に効きます。
生薬成分の「半夏」は胸に水がたまる状態(吐気、嘔吐)を乾わかして症状を改善させる作用があります。
半夏の入っているお薬はこのような乾かす作用がありますので、口渇(のどのかわき)がみられていなくて、舌が乾いていない時に使える漢方薬です。
生薬成分の「黄連」、「黄ゴン」は下痢とみぞおちの不快感を改善します。「人参」も同様にみぞおちの不快感を改善します。
五苓散や猪苓湯と異なるのは口渇(のどのかわき)がみられない悪心のある下痢に使いますと良く効きます。

D真武湯
寝冷えのような冷えでおきた下痢に良くき効きます。
例えば冷たいもの飲んで下痢をした時とかクーラーをつけっぱなしで手足が冷えて下痢になった時などが寝冷えの下痢となります。
「冷え」が原因ですのであたためて治すことが良いことになります。
生薬成分の「附子」は体の内側を温める作用があります。「附子」は強く体を熱して温めて冷えているのを温める作用があります。
「附子」は四肢(手足)を温めます。
「附子」が入っている漢方薬を使える時の目安は脈が弱く触れる「沈脈」という状態の時です。逆に脈がしっかりと強く触れる「浮脈」の時には「附子」が入っている漢方薬は使えませんので注意が必要です。 



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