小児の冷えと漢方薬治療
冬とは限らずに、お子さんでも「冷え」の症状が年中あり様々な症状を示してくることがあります。
その原因としては、体中の血液の分布に部分的な片寄りがおこっていることがあります。
1)桂枝茯苓丸
体が何となく調子が良くないというお子さんは意外と体の血液の分布が均等になっていないことがあります。
血液が部分的に「充血」している状態を「癒血(おけつ)」と言います。(「癒血」は部分的に血液が体の中で片寄っていることです。)
「癒血」の自覚症状としては主にお腹と下肢のものが多くみられます。
何となくお腹が痛い、お腹の調子が良くない、便秘をする、足が腫れぼったい、足が痛い、足が冷たい、夕方になると足の調子が良くないなどです。
「癒血」がありますとお子さんに舌をひっくり返してごらんと言いますと「舌下静脈の怒張」が見られます。
健康なお子さんですと舌の裏側の舌下静脈はほとんど見られず、そして太く怒張して見えることもありません。
この舌下静脈の怒張が「癒血」の簡単な見分け方です。
「癒血」のお子さんは首から上の方は温かくて手足を触ると冷たいという「上熱下寒型」の「冷え症」の状態をしめしていますので、首や手や足を触れると良くわかります。
ですので頭の方は暑く感じたり、ややイライラしたり頭痛がしたり頭がカッカとします。対照的に手足は冷たいのでその冷えの状態が出てきます。
大きなお子さんや成人の女性には下肢の静脈瘤もみられますがこれも「癒血」の代表的なサインです。
桂枝茯苓丸には、「桂皮」が入っていますので体の表面を温めながらお腹の中を温める作用があります。
また「のぼせ」(気逆)にも効果があります。「のぼせ」とは「イライラ」する、「頭がカッカ」する「興奮しやすい」などの症状を示しています。
「癒血」のお子さんはお腹を触ると冷たいことがよくあります。手足以外にお腹も冷えているのです。
また、「牡丹皮」と「桃仁」が入っていますのでお臍の下腹の痛み(不快感)(少腹痛)をとる作用もあります。
「癒血」のあるお子さんはお腹を優しくソフトに触れますとお臍の下側の左右を押した時にかなり痛がります。お子さんが腹痛を訴えていなくてもお腹をさわって押してみるとこの症状がよくわかります。
このように痛がる症状を「臍傍圧痛」といいまして痛がる場所を「癒血点」といいます。
ポイントは直接お腹を優しくさわってみると初めてわかることです。
この下っ腹の痛みを改善するのが「牡丹皮」と「桃仁」なのです。「茯苓」も入っていますので「気逆」でのぼせて「動悸」や「めまい」が伴なったお子さんにも効果があります。
「芍薬」は「牡丹皮」や「桃仁」と同じでお腹の痛みをとる成分です。
「癒血」のお子さんはもう一つお腹の特徴があります。それは心窩(みぞおち)からお臍の上あたりまでをゆっくり触りますと腹部の大動脈の拍動をはっきりと触れることです。
拍動が触れた時にお子さんに「触っているお腹のところがドキドキしているのがわかりますか」とたずねるとお子さんは「ハイ」としっかりわかり答えてくれます。これを「臍傍動悸」といいます。
「桂皮」が効くのはこのお腹の動悸にもあるかもしれません。
2)当帰芍薬散
お子さんで爪が割れやすいとか指先の皮膚がカサカサして乾燥している時などは「血虚」のサインです。
「血虚」は「癒血」とは違って本来手や足の先端といった末梢の部分の血液が不足していておこる状態です。これは「末梢循環不全型」の冷え症です。
「血虚」を治すお薬が補血剤で成分にも入っている「当帰」「川弓」「芍薬」が効果を発揮します。
「血虚」のお子さんは末梢の血流不足のために爪がわれたり、手の指先や足の指先がカサカサ乾燥してきますが、お腹の中にも「血虚」「血流不足」が見られますので、お腹の痛みの症状(少腹痛)も出てきます。
「当帰」は皮膚の状態も改善して「小腹痛」にも効きますのでお肌の状態がよくなくて冷えでお腹が痛いお子さんに効きます。
「川弓」は頭痛にも効きますし、「小腹痛」にも効きますので頭が痛くて冷えでお腹が痛いお子さんに効きます。
ここでいう「少腹痛」というのは、例えば不正出血をした時や、月経痛で起きる腹痛、血流不足で起きるお腹の痛みを示しています。
「血虚」も冷えの原因となります。
例えばお子さんの「しもやけ」も「末梢循環不全型」冷えの症状になります。
成分に含まれています「茯苓」「蒼朮」「沢瀉」は乳水剤ですので乾燥したお肌に水分も潤してくれます。
3)当期四逆加呉しゅゆ生姜湯
お子さんで「しもやけ」や「手足の冷え」の症状が強い場合に効果があります。
呉茱や細辛が入っていますので体をより温めて末梢の血流を良くします。
小さなお子さんには少し飲みにくい漢方薬です。
「末梢循環不全型」の冷え症に効きます。
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