抗インフルエンザとインフルエンザワクチンの課題H7N9に備えて
神奈川警友会 けいゆう病院小児科 菅谷憲夫先生講演会
@発病防止からみたインフルエンザワクチンの効果はインフルエンザA型では1〜6才ですと52%、6ヶ月〜1才ですと80%です。
AA香港型のインフルエンザに対してはインフルエンザワクチンは効果が低い傾向にあります。健康成人ですと40〜50%、高齢者の発病防止効果は11%とさらに低くなります。
Bインフルエンザワクチンは65才以上の高齢者ではA香港型インフルエンザに対してはほとんど効果がありませんがB型インフルエンザには高い効果があります。
C「健康な高齢者」にインフルエンザを接種しますと重症化や死亡率が低下していますが、高齢者全体にこの傾向がみられるわけではありません。
Dインフルエンザワクチンの学童集団接種の時期はこのおかげで高齢者の死亡率が下がっていました。これは「indirect protection」という予防効果です。
Eインフルエンザワクチンの学童集団接種を止めてから1〜4才児のインフルエンザでの死亡率が増えました。
(インフルエンザの脳炎や脳症が増えました)
これは、学童集団接種が幼児のインフルエンザの死亡や脳炎や脳症を抑えていたことになります。これも「indirect protection」という予防効果です。
F学童集団接種の時期は、インフルエンザによる学級閉鎖日数と欠席率も抑えて抑止力がありました。これを「direct protection」という予防効果です。
Gアメリカは学童集団接種の方向に向かっています。
H現行のインフルエンザワクチンは卵の中で培養されて作られていますが、卵の中でインフルエンザウイルスの変異がおきていまいますので出来上がったワクチンの効果が下がってしまいます。インフルエンザ効果の低下がある現状で高齢者をインフルエンザで助けるには予防投与しかありません。もし、病院の病室内でインフルエンザの患者さんがでましたら個室に隔離することと同時に同じ病室にいた患者さんにはタミフルかリレンザの予防投与を同時に開始するのが最も良い対応策となります。
IH7N9の出現
1)このタイプのインフルエンザウイルスは致死率が33%と重症です。
2)まれですが、感染しますとほぼ重症化します。
3)脳炎をおこしやすく、パンデミックをおこしやすい特徴があります。
4)弱毒ウイルスなので鳥に感染しても症状は出ません。
5)耐性ウイルスにはT-705(Favipiravir)が効きます。
ただし、T-705は妊娠している女性には使えませんし、妊娠している女性の夫にも使えません。
J抗インフルエンザ薬
1)B型には吸入タイプのものがよく効きます。
2)A香港型インフルエンザにはタミフルがイナビルより解熱時間が短い傾向があります。
3)入院している患者さんにはタミフルの内服がラピアクタの点滴が良いでしょう。
4)ラピアクタの点滴は早期に使いませんと効果が出ませんので発熱後48時間以内が良いでしょう。
5)ラピアクタの点滴は投与24時間後には薬剤濃度がほとんど無くなりますので、インフルエンザの重症例では1回目の投与から24時間後に2回目の再投与をしても良いですし、さらに解熱するまで連日投与してもよいでしょう。
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