小児の急性発熱感染症と漢方薬治療


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小児の急性発熱感染症と漢方薬治療
〜急激に発熱を示してくるのが小児の感染症の特徴ですが、この時にとても役立つ漢方薬があります。〜

@麻黄湯
 麻黄湯と言いますと「インフルエンザ」を思いおこす方が多いかと思いますが、「インフルエンザ」以外でも効果を発揮します。
 麻黄湯は杏仁、桂皮。麻黄、甘草の4つの生薬成分から成り立っています。
 この中の、「麻黄」と「桂皮」は体の中から外にむかって「水分」を移動させて体の表の水を排除する生薬で発汗を促す作用があります。
 発熱でぐったりしている時に汗をかかせて熱を下げる作用をもっているのです。1日3回の処方でも初回は2回分と多めにのむと早く熱が下がります。
 この時の使用のポイントは「寒気」(悪寒)が必ずあることです。
 発熱があっても「寒気」(悪寒)がない時は使えません。
 発熱していて体の表面に「寒気」(悪寒)があるというのは「表寒」の状態で、これを改善するのが「麻黄湯」です。さらにこの時2つ目の使用のポイントは脈がしっかりと触れること「浮脈といいます」も必要です。逆に発熱があっても脈が弱く触れるかほとんど触れない場合は「沈脈」といいまして体の裏側(内側)が冷えていることが多い「裏寒」の状態なのでこの場合麻黄湯は使えません。
 「麻黄湯」の成分の「杏仁」は腫脹したものの腫れをとる作用がありますので発熱に伴う関節痛や頭痛に効果があります。
 「麻黄湯」の成分の甘草は脱水の補正をになっています。
A麻黄附子細辛湯
 「裏寒」の時には裏側だけではなく表も冷えていることが多くあります。「裏寒」のタイプの患者さんは感染しても発熱しないことが多いので注意が必要です。お子さんや老人や若い人に見られることがあり、その時は「麻黄附子細辛湯」を使いますと良くなります。「寒気」(悪寒)があって脈が弱く触れるかほとんど触れない「沈脈」が処方の良い使用目標になります。
B葛根湯
 麻黄湯と同様に麻黄と桂皮入っていますので発熱がありぐったりしている時に汗をかかせて熱を下げる効果は似ています。
 麻黄湯との違いは
1)葛根が入っているので「うなじの凝り」を改善させる作用があります。
2)芍薬が入っているので鎮痛、鎮けい作用があります。頭痛や筋肉痛、関節痛、腹痛にも効果があります。
3)生姜、大棗、甘草が入っているので胃薬の効果がありますので麻黄湯で胃の調子が良くなくなる方には葛根湯の方がより良いでしょう。
4)麻黄湯の方が構成生薬の数が少ないので重い発熱には葛根湯よりも「切れ味」が良いと考えられます。

急激な発熱のお子さんに漢方薬は効果がありますが次の点に注意が必要です。
急速な発熱疾患には、インフルエンザが典型例ですが、インフルエンザには溶連菌感染症が合併することがかなり多くみられます。
溶連菌感染症の主な症状は発熱、頭痛、喉の痛みや全身の倦怠感や関節痛と様々でインフルエンザに似ていますが典型的なものでは写真にみられますような「発疹」と「イチゴ状舌」が見られます。
「発疹」は細かい赤いものが多く主に「体」にみられますが「手」や「足」にみられることもあります。
「イチゴ状舌」は文字通りイチゴの表面の皮のように舌がブツブツと赤くなるものでどちらも溶連菌に特徴的なものです。
「発疹」や「イチゴ状舌」が見られない溶連菌感染症もありますのでインフルエンザの症状を訴えるお子さんはインフルエンザの検査と一緒に溶連菌の検査して確認するのが良いでしょう。
インフルエンザに溶連菌を併発している場合は漢方薬だけではなく抗生剤の内服が必ず必要になるからです。




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