B型肝炎ワクチン
B型肝炎ワクチン Q&A
(監修:NTT西日本九州病院 院長 藤山重俊先生より抜粋させていただきました。)
Q1:B型肝炎ワクチンは授乳婦に接種できますか?
A1:B型肝炎ワクチンは不活化ワクチンですので授乳中に接種しても、母体及び乳児に影響はないと考えられていますので、出産後のお母さんの体調が予診等により問題ないと判断される場合には接種して差し支えありません。
産科医によって判断は分かれるかと思いますが、一般的に出産三か月を過ぎた頃から出産前の体力に戻ると考えられます。したがって有効性の観点から間隔を考慮するとすれば、産後数か月経過してから接種することが望まれます。
Q2:B型肝炎ワクチンは新生児・乳児に接種できますか?
A2:これまでに新生児や乳児へのB型肝炎ワクチン接種に対して有効性、安全性で問題が生じたという報告もありません。
実際にはB型肝炎ウイルスキャリアの母親から生まれた乳児には、母子感染防止事業として生後2ヶ月から接種しています。
B型肝炎ワクチン(ビームゲン)では新生児や乳幼児での副反応出現の報告はこれまでありません。
Q3:HBS抗原や抗体が陽性の人に接種してもいいですか?
A3:B型肝炎ワクチンは、一般的にHBS抗原・抗体いずれも陰性の人に接種することが望まれます。HBS抗原が陽性であることはキャリアであることを示しており、その様な方へのワクチン接種は通常、行われません。
Q4:1回、2回の接種でやめても構いませんか?
A4:B型肝炎ワクチンは3回接種で基礎免疫になります。初回接種後4週目で抗体陽性になる人はいますが、その陽転率は約13%と低く、2回目接種4週後においても約50%程度です。
しかし、3回目の接種を行うことで、約95%が抗体陽性になります。
したがって1回や2回で抗体が陽性になった場合でも、是非3回目の追加免疫を行っていただくことをお勧めします。
Q6:接種回数と効果について教えてください。
A6:B型肝炎ワクチンは大きく、@B型肝炎の予防AB型肝炎ウイルス母子感染の予防BB型肝炎ウイルス汚染血による汚染事故後の発症予防の3つに使用目的が分けられます。接種する場合はいずれも3回接種になります。
Q7:HBS抗体価を測定するタイミングはいつがよいですか?
A7:抗体価の測定はワクチン3回目接種後1〜2ヶ月を目途に行って頂くことをお勧めします。
Q8:3回接種しても抗体を獲得できなかった場合は、どうしたらよいですか?
A8:明確に確立されたプロトコールは残念ながらありません。
@3回接種後6ヶ月以上あけて4回目を接種する。
A6ヶ月以内に第4回目として2倍量で追加接種する。
Bワクチンの接種を変更して追加接種する。
C追加接種を一ヶ月間隔で2回する。
Q9:ワクチンの効果はどのくらい持続しますか?
A9 :@ワクチン3回接種後の抗体価が高いほど、より長期の持続が期待できる。
A3回接種後3年程度で約半数が陰性化する可能性がある。
Q10:主な副反応とその対処法を教えてください。
Q10:多くは軽度かつ一過性ですが、重大な副反応として「ショック、アナフィラキシー様症状」「多発性硬化症」「急性散在性脳脊髄炎」「ギラン・バレー症候群」の報告があります。
@局所の発赤・腫脹、硬結
一般的に発赤・腫脹は3〜4日で消失するが、熱感、発赤の強いときには局所の冷湿布を行う。
硬結は次第に小さくなるが1ヶ月後でもなお残る場合もある。これについては放置してよい。
前回の接種で局所反応が出現した場合、次回からの接種は、なるべく皮下深く接種する。
A発熱
発熱の対策は一般的処置として冷却、アセトアミノフェン等の解熱剤を投与する。他の原因による発熱も考えられるので観察が重要である。
Q11:接種間隔がずれたときはどのようにしたらよいですか?
A11:B型肝炎ワクチンは3回接種するのが基本となります。
接種スケジュールがずれた場合としては以下のようなスケジュールが考えられます。
@1回目と2回目の間隔が4週を超えた場合
その後、規定通り3回目のワクチンを接種接種すれば基礎免疫が得られると考えられます。
A1回目と2回目の間隔が4週未満であった場合
データはありませんが、やり直すことはせず、まずは引き続き3回目を接種します。
B2回目と3回目を規定通りより長い間隔で接種した場合
3回目の接種は、6ヶ月以降(12か月くらいまで)の方が6ヶ月目接種より抗体価の上昇が良いとのデータもありますので、時期が遅れても引き続き速やかに3回目を接種してください。
C2回目と3回目を規定より短い間隔で接種した場合
0.1.3ヶ月で接種した群と0.1.6ヶ月で接種した群の、抗体陽転率及び平均抗体価を調べたデータがあります。この報告によると、抗体陽転率に関して差は認められなかったものの、平均抗体価は前者の方が有意に低値であるという結果でした。
Q12:他のワクチンとの同時接種は可能ですか?
A12:麻しん風しん混合ワクチン・BCGワクチンを接種した日から別の種類の予防接種を行うまでの間隔は、27日日以上置くこと。沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合トキソイドを接種した日から別の種類の予防接種を行うまでの間隔は、6日以上置くこと。
Red Book(American Academy of Pediatrics発行)には、多くのワクチンは同時接種は禁忌ではない、と記載されています。
Q13:生後何か月から接種できますか?
A13:B型肝炎ワクチンの用法用量では、「10歳未満の者には0.25mlを皮下に注射する」となっており、接種対象年齢の下限は定められておりません。
現在、B型肝炎ウイルスキャリアの母親から出生した児に対して行われているわが国のB型肝炎母子感染防止事業では、生後2ヶ月児から接種を始めています。
一方、国際的には通常、出生直後から接種されており、WHOやユニセフでは原則として出生直後、1ヶ月、及び6ヶ月の3回接種が勧告されています。
米国のRed BookにはB型肝炎ワクチンの接種の接種時期について、「全ての乳幼児のは生後できるだけ早く、病院を退院する前にB型肝炎ワクチンの初回接種を受けるべきである」「HBS抗原の有無が不明の母から生まれた乳児は生後12時間以内にB型肝炎ワクチンの初回接種を受けなければならない」と記載されており、極めて早い時期での接種を推奨しています。
Q14:3回の接種において異なるメーカーのワクチンを接種しても構いませんか?
Q14:国内の異なるメーカーのB型肝炎ワクチンを接種しても、想定される支障は現時点ではありません。
Q15:免疫抑制状態(ステロイド、その他の免疫抑制剤使用中の人、透析患者など)にある方や、インターフェロン、抗がん剤、抗生物質などを使用している時のB型肝炎ワクチン接種について、その可否、接種上の注意について教えてください。
A15:免疫抑制状態の人へのB型肝炎ワクチン接種は可能ですが、抗体産生が十分ではない可能性があります。インターフェロン、抗がん剤、抗生物質を使用中の人も接種可能と考えられますが、薬剤を使用する背景となる原疾患の状態(病状が落ち着いているか、熱はないかなど)を予診により確認する必要があります。このような人に接種する場合、効果が減弱する可能性があることをあらかじめ説明しておくのがよいと考えられます。
現行のB型肝炎ワクチンは遺伝子組換えワクチンであり不活化ワクチンに分類されるため、宿主の免疫状態にかかわらず、ワクチンウイルスが活性化することはありません。
抗生物質や抗結核薬、感冒薬の服用もワクチン自体に大きな影響を与えないと考えられます。ただし、各種薬剤を服用中の場合、その時点で患者さんがワクチン接種に適した状態であるか(病状が落ち着いている、熱がない、など)を検討する必要はあります。
Q16:ワクチン中に添加されているチメロサールは安全ですか?
A16:チメロサールを含むワクチン接種を受けた人に対して何らかの対策が必要である、あるいは今すぐワクチン接種を中止する必要があるとは考えられていません。
<<戻る
<<TOP
(c)たんぽぽこどもクリニック