「食べること」を目指した食物アレルギー治療の実際


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同志社女子大学 伊藤 節子先生 講演会

 1.乳幼児期の食物アレルギーは80%が遅発性の症状のものでアトピー性皮膚炎が多いです。

 2.乳幼児期の食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎は母乳を飲んでいる赤ちゃんがほとんどです。
   この赤ちゃんがミルクを初めて飲むと、急性の重症食物アレルギーの症状が出てきます。(即時型反応:アナフィラキシー)

 3.食物アレルギーを発症する乳児はアトピー素因を有しています。
   また食物の他に犬の皮くずや猫の皮くずにアレルギーをもっていることが多いです。

 4.赤ちゃんがお母さんのお腹にいる時に、経胎盤性のアレルギーが起きてくる確率は0.5%で出生前にアレルギーが起こることよりも、出生後にアレルギーが起こることが多いのです。

 5.離乳食開始前のアトピー性皮膚炎の乳児の食物アレルゲンにアレルギー反応を示してくるのは
   @卵
   A牛乳(母乳栄養児の方がミルク栄養児よりアレルギーを起こす確率が高いです。)
   B小麦

 6.食物アレルギーによる症状では、生涯で最初におこるアレルギー疾患のことが多いです。

 7.食べることを目標とした食事を考えることが大切で、必要最低限の除去食にしましょう。

 8.食物アレルギーはアトピー素因は強いグループですので、早期より室内の環境整備を開始しましょう。
   例えば室内ペットの禁止や受動喫煙の回避です。

 9.乳児期発症の食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎は
   @室内環境の整備
   Aスキンケア
   B適切な軟膏の塗布
   C食物アレルギーの疑いのある赤ちゃんは2週間除去してみましょう。
    (母乳も除去してみた方が良いこともあります。)
      A)これで症状が変わらなければ食物アレルギーの心配はありません。
      B)これで症状が軽快しますと食物アレルギーの可能性になります。この場合には母乳を飲ませて症状をみましょう。

10.乳児期発症の食物アレルギーに関与するアトピー性皮膚炎では、年齢とともに食物アレルギーの出やすさが減少してきます。

11.乳児期発症の食物アレルギーで、即時型反応を示したグループは「ぜん息」になりやすいです。

12.お子さんの成長自体が食物アレルギーが治っていく重要な因子です。これは成長に伴ない消化管(腸)の能力が改善してくるためです。

13.食物アレルギーが起こるかもしれないといって、離乳食の開始を遅らせることは必要ありません。

14.家庭料理をベースに食品除去するのが良いでしょう。

15.普通の「お醤油」はアナフィラキシーを起こしていません。
   (原材料として小麦が使用されていますが、極微量なので問題はありません。)

16.たまたまアレルギーの検査をして牛乳アレルギーの反応が出たとしても、混合栄養や人工栄養で症状が出なければ継続して良いでしょう。

17.牛乳は加熱しても牛乳アレルギーの原因物質のカゼインが変化しないので注意しましょう。
   牛乳は加熱してもこのような状況なので、牛乳アレルギーは卒業しにくいです。

18.大豆アレルギーがあっても味噌・醤油・大豆油は食べられる可能性が多いです。

19.魚アレルギーがあっても、かつおぶしのだし汁は大半が食べても問題はありませんし、缶詰の魚肉は食べられることが多いです。

20.卵ボーロは生卵に近い卵抗原量をもっています。
   クッキーの方が卵ボーロよりはるかに卵抗原量が少ないです。

21.牛乳アレルゲン除去ミルクは牛乳アレルギーの原因であるカゼインはほとんどみられません。

22.パンの中の牛乳の抗原量はとても少ないです。

23.うどんの中の小麦よりパンの中の小麦の抗原量が多いのです。

24.固ゆで卵を直後に卵黄と卵白に別々にしますと、卵の抗原量は少ないのですが、茹でた後にしばらくしてから卵黄と卵白を別々にしますと、卵白が卵黄に溶け出してしまい、卵の抗原量が卵黄の中に増えてしまうので、注意が必要です。

25.乳児期発症の食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎で、食品除去中にもかかわらず症状が悪化した時には、除去食品以外の食品が原因のことがあるので、食物負荷試験が必要です。

26.食品除去を解除している時に、体調不良や運動・入浴・非ステロイド系鎮痛剤などの要素が加わりますと食物アレルギーの症状が再燃や悪化しやすいです。

27.赤ちゃんの家族歴にアレルギーの病気があっても、赤ちゃんの離乳食を遅らせることは必要ありません。
   どうしても心配なときにはお魚→お肉→豆腐→卵と離乳食を進めていっても良いでしょう。

28.お肉のアレルギーはないと考えて良いでしょう。



  





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