学童期 気管支喘息の治療戦略


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学童期 気管支喘息の治療戦略

獨協医科大学 吉原 重美 先生講演会

学童期ぜん息(5才〜15才)

 1)ぜん息症状を気にすることなく日常生活をおくれていない患者さんは30%前後います。
 
 2)保護者の60%は現在行なわれているお子さんのぜん息の治療に満足していません。
 
 3)学童期のぜん息に行われている治療はまだ不十分なものが多い傾向にあります。
  (実際はもう少し上のレベルの治療が必要なお子さんが多いのが現状です。)
 
 4)学童期 気管支喘息の治療戦略学童期ぜん息の90%はアトピー型です。
 
 5)学童期ぜん息の治療は
 
 @90%はアトピー型なので診断と治療がしやすい傾向にあります。
 
 Aアトピー型の学童期ぜん息では吸入ステロイド薬が良く効きます。
 
 B軽い症状のうちから治療をしましょう。
 
 6)受動喫煙や運動でぜん息の症状が出るのは気管支の壁が厚くなり、気道が狭くなるリモデリングという状態が起きているサインです。
 
 7)学童期にぜん息の症状が重いと、リモデリングが進行しています。
 
 8)アレルゲンにより気道の収縮が起きると、リモデリングが起こります。
 
 9)ゼイゼイとぜん息の発作を繰り返しているお子さんは、リモデリングが進行しています。

10)マイコプラズマ感染症でも、気道過敏性が亢進しますので、ぜん息が起こりやすくなります。

11)ぜん息の症状が消失していても、気道過敏性だけではかなり長期に残っていますので、吸入ステロイド薬でしっかりと長期間治療することが大切です。

12)ぜん息の気道過敏性を改善してぜん息の発作を未然に防ぐためには、長期間のコントロールを維持する必要があります。

13)気道収縮を繰り返していますと、気道のリモデリングが進行しますので、お薬による治療を継続すると共に、周辺環境の完備(例えばダニ対策や周囲の禁煙)が大切です。

14)軽症〜中等度のぜん息では吸入ステロイド薬の方がロイコトリエン拮抗薬(オノンやキプレス)より症状のコントロールが良く、呼吸機能の改善も良い傾向にあります。

15)運動誘発性ぜん息では、吸入ステロイド薬はロイコトリエン拮抗薬よりも、運動誘発の気道収縮の抑制効果が高いのが特徴です。

16)吸入ステロイド薬はロイコトリエン拮抗薬に比べて呼吸機能の改善が大きい傾向にありますので、ぜん息における第一選択の治療薬です。

17)学童期ぜん息で吸入ステロイド薬がそれほど有効でない患者さんも一部いますので、その場合にはロイコトリエン拮抗薬やテオフィリンの併用も必要です。

18)学童期ぜん息の患者さんで、ぜん息の症状がある患者さんで、小学生〜高校生での吸入ステロイド薬の使用率が低いのですが、本来ならば吸入ステロイド薬で治療されるべきものです。

19)学童期ぜん息で十分な治療を受けていない(吸入ステロイド薬未使用)の患者さんが依然として多いのが現状です。
   特に中学生では全く治療を受けていないぜん息の患者さんが80%近くを占めています。

20)思春期に入るまでの十分な吸入ステロイド薬の治療を続けていくことが大切です。

21)5才〜15才のぜん息の患者さんに対して、今までの薬剤を中止してパルミコート吸入剤に変更したところ、患者さんのぜん息症状の改善とその保護者の満足率が良くなっています。
   さらに病院を受診する回数が著明に減りました。

22)他の吸入ステロイド薬をすでに使用しての患者さんに、パルミコート吸入剤の単独治療による治療を行ったところ、開始から4週間までにぜん息症状の改善とその保護者の満足度の改善がみられました。

23)学童期ぜん息のコントロールを良くするには
 @アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎 
 A月経
 B肥満
 Cステロイド薬拮抗性
に注意することが重要です。

24)早い段階から吸入ステロイド薬の使用を検討して、思春期に入るまでに、ぜん息を完全にコントロールすることがとても大切です。

25)ぜん息は学童期以前にしっかりと治療してコントロールしておくことが大切です。

 





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