アトピー性皮膚炎のスキンケアと外用療法
〜杏林大学医学部 塩原哲夫先生講演会より〜
1.アトピー性皮膚炎のお子さんは「秋」に生まれたお子さんが多い傾向にあります。
2.何故アトピー性皮膚炎が増えたのでしょう。それは「汗」をかく機会が減ったためです。
3.汗腺(汗を分泌する組織)2才半までに出来上がります。
4.お子さんの方が大人の人より汗っかきです。
5.最近のお子さんは全身の汗をかくことが減り、逆に手のひらに汗をかくことが増えています。
6.皮膚の一番表面の角層という部分に、いかに水分をためておけるかがスキンケアのコツになります。
7.野外での夏期の相対湿度の低下と冷暖房の普及が角層内水分量の低下になり、お肌が乾燥してくるのです。昔は野外は暑く湿度も高く冷房の設備もなかったので、一杯汗をかく機会があったのです。
8.保湿剤(ヒルドイド)を乾燥した皮膚に塗りますと角層内水分量が増加します。
9.ステロイドの外用剤を乾燥した皮膚に塗りますと角層内水分量が低下します。
10.「汗」をかきますと角層内水分量が増加します。
11.角層内水分量を低下させる薬剤として抗ヒスタミン薬や抗うつ剤があります。
12.「汗」の中には抗菌物質が複数入っています。この抗菌物質の中には皮膚の善玉菌はやっつけないで悪玉菌をやっつけてくれる働きがあります。ですので発汗が減少しますと抗菌作用が低下しますので「とびひ」や「カポジ水痘様発疹症」などの皮膚の感染症を起こしやすくなるのです。
13.運動をしますと汗をかきますので角層内水分量が増えますので、この状態で保湿剤(ヒルドイド)を塗りますと更に角層内水分量が増加します。
14.プロトピック軟膏はステロイドの外用薬と違って塗りましても角層内水分量はあまり下がりません。
15.アトピー性皮膚炎では発汗反応が低下していますのでアトピーの発疹のあるところでも発疹がないところでも皮膚に汗をかかない特徴があります。
16.アトピー性皮膚炎では汗をかかせた方が良いのです。
17.アトピー性皮膚炎では発汗の減少により角層内水分量が減少して炎症が起こしてくるのです。
18.保湿剤(ヒルドイド)は発汗反応を改善させます。保湿剤(ヒルドイド)を塗ったところは発汗が促進されます。ステロイドの外用を塗ったところは発汗が低下します。
19.全身のバランスの良い発汗が大切です。アトピー性皮膚炎では暑い環境にいても汗をかきませんので暑い環境が苦手です。
20.アトピー性皮膚炎では全体の発汗量がとても低下しています。
21.保湿剤のヒルドイドは発汗を亢進せますが、ワセリンは逆に発汗を低下させます
22.汗をかくには、冷房はつけない方が良いことになります。
23.次の3点がありますとアトピー性皮膚炎になりやすくなります。
1)学生時代に激しいスポーツをしていた人が急にスポーツをやめた場合
2)入浴を止めてシャワーのみにするようになった場合
3)ナイロンタオルで皮膚をこする場合
24.成人の難治性皮膚疾患では一保湿剤のヒルドイドソフトを25g(1本)/日と大量に使用しますと皮膚の状態が改善してきます。この場合にたっぷりと厚く塗って、その上からサランラップでおおってヒルドイドがとれないようにすることが大切です。ヒルドイドソフトは、お風呂を出でから直後に塗ると良いでしょう。
25.保湿剤はジェネリックのものでは角質水分量の増加がほとんど見られず効果がありませんので注意が必要です。
26.保湿剤は皮膚部(発疹のある部分)以外にも使用することが大切で厚くたっぷりとたくさんぬると良いでしょう。
27.シャワー浴より入浴のが角質内水分量にとっては良いことになります。
28.プロトピック軟膏はステロイドの外用薬と異なって皮膚を乾燥させることはありません。皮膚の発汗低下が皮膚を乾燥させる最大の原因です。
29.赤ちゃんのアトピー性皮膚炎ではオムツのところには発疹があまりできません。これはオムツをしている部分は発汗が亢進しているので乾燥しないからです。
30.アトピー性皮膚炎で感染を起こした時はステロイドの塗り薬を使用した方が感染の原因の細菌の減少が抗生剤の塗り薬より速い場合があります。
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