日本と欧米のワクチンギャップを考える


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日本小児科学会推奨のスケジュールから見えてくる現状と課題

新潟大学 斉藤昭彦先生講演会


1.B型肝炎

母子感染以外の父子感染が増加しています。
お父さんの唾液や汗・尿・涙からB型肝炎ウイルスが高い濃度で検出されますので、これにお子さんが接触すると感染する可能性があります。
B型肝炎のお子さんの1/3が母子感染以外の感染により起こってます。2/3が母子感染です。
急性B型肝炎は、25〜30才代のお父さん年齢層の増加が目立っています。
B型肝炎ワクチンを標準接種することで、お子さんをB型肝炎の感染から守ることが大切です。


2.ポリオ

@経口生ポリオワクチンによる関連麻痺
 1)1.2人/100万接種の頻度で発生しています。
 2)1回目の接種で起こることが多く、男の子に多くみられます。
A不活化ポリオワクチンの早期導入が必要です。
B世界的には野生株ポリオの流行が存在しますので、ポリオワクチン接種率を保つ必要があります。
C不活化ポリオワクチンを待つことは望まれません。
D経口生ポリオワクチンより不活化ポリオワクチンの免疫力は高い傾向にあります。

3.ムンプス(おたふく)

合併症として髄膜炎・脳炎・難聴・睾丸炎・膵炎があります。
ほとんどの先進国ではムンプスワクチンの2回接種が標準となっています。


4.水痘(みずぼうそう)

合併症として小脳失調症・脳炎があり、妊婦さんが罹りますとお子さんに奇形が出てきます。


5.ムンプスワクチンと水痘ワクチンのそれぞれ2回接種の必要性があります。

ワクチン接種率が上がりますと、ムンプスや水痘の病気が減少しますので、周囲からの免疫刺激効果がなくなるからです。
免疫が下がりますと、病気が増加しますので2回目のワクチン接種により、免疫を確実に上昇させることが良いのです。


6.思春期百日咳ワクチンの再検討

思春期に百日咳が流行することがありますので、2種混合ワクチンの代わりに3種混合ワクチンを0.2ml接種することで、百日咳の免疫機能を上昇させる可能性があります。


7.定期接種と任意接種

1)海外では定期接種と任意接種に分けることはしていません。
すべてのワクチンを定期接種にしています。

2)複数のワクチンを同時接種しても、それぞれのワクチンに対する有効性についてお互いのワクチンのさまたげはありません。

3)同時接種のワクチンの本数に制限はありません。
生ワクチンと不活化ワクチン・不活化ワクチンと不活化ワクチン・生ワクチンと生ワクチンいずれも同時接種は可能です。

4)同時接種の利点として
a)病気の早期予防になります。
b)ワクチン接種率の上昇になります。
c)ワクチン接種者の保護者の負担が減ります。(通院回数が少なくて済みます。)
d)ワクチンの同時接種は日本のこどもを守るために必要なことです。


8.Hib(ヒブ)と肺炎球菌の同時接種の死亡について

1)ワクチン接種と死亡については関連性はありません。
2)世界での肺炎球菌の死亡率は0.1〜1人/10万人接種で、ヒブは0.02〜1人/10万人接種です。
これと比べて日本の死亡率が特に高いわけではありません。
3)ヒブと肺炎球菌ワクチンの安全性は問題はありません。
4)ヒブと肺炎球菌ワクチンの再開後の死亡率の上昇は認められていません。


9.ワクチンの有害事象と副反応は違います。

1)有害事象
ワクチン接種後に起こる全ての事象で、偶然に起きた可能性があります。
2)副反応
ワクチン接種によって引き起こされたと考えられる、局所の接種部位の発赤や腫れをさしています。


10.ワクチンと病気の関係?

MMRワクチンと自閉症・インフルエンザワクチンとギランバレー症候群といった関連が取り上げられていますが、実際には因果関係はありません。


11.個人予防と集団予防

ワクチンを接種して人を病気から守るのが個人予防です。
ワクチンを受けたこともなく、また受けられない人を周りにワクチンを接種した人がいることで、その人達を守ることが出来るのが集団予防です。


12.ワクチンの効果と副反応

副反応に目を向けるのではなく、ワクチン効果の方が高いことを重要と考えることが大切です。


13.ワクチンの同時接種

こどもの車のシートベルトと同じで、1本ではなく何本も初めからきちんとシートベルトをして交通事故から守ることが大切です。
同時接種も同じで1本づつ接種するのではなく、初めからきちんと数本接種してこどもを守ることが大切なのです。




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