食物アレルギーの新しい考え方
食物アレルギーの新しい考え方
神奈川県立こども医療センター
栗原 和幸先生講演会より
@母乳の中には赤ちゃんのアレルギーを抑える物質が入っています。
Aアトピー性皮膚炎を発症してそのままの状態でいますと、食物アレルギーが起こりやすくなります。
B食物アレルギーのアナフィラキシーショックの死亡例は平均で2.9人/年と少なく、食物アレルギーで死亡することは極めて少ないと考えられます。
食事は偏らないで幅広く食べることで、お子さんのアレルギー症状は抑えることができます。
Cアレルギーを発症している状態でも、大量に食物を1回食べておくか、または大量の食物を連日食べておくとアレルギーは起こりにくくなります。
Dアトピー性皮膚炎で食物アレルギーがある場合に、皮膚の状態を治療して良くしておくと、食物アレルギーの症状も気にならない程度に減ってきます。
E皮膚の中のフィラグリン遺伝子の異常がありますと、皮膚が保湿することが出来なくなり、皮膚のバリア機能が壊れてしまい、結果としてアトピー性皮膚炎が起こり、皮膚の表面から食物が体の中に入ってきて食物アレルギーが起こるのです。
F皮膚の異常がありますと、ピーナッツアレルギーが起こってきます。
G食物を口から食べますと(経口暴露)食物アレルギーのお子さんでも慣れが生じて、食物アレルギーを起こさなくなります。
食物に対して耐性が出来るのです。例えば赤ちゃんの時に卵アレルギーだったお子さんが、1才過ぎから卵アレルギーを起こさなくなってくるのは、この耐性が出来るからなのです。
H食物が皮膚に付着して皮膚から食物が吸収されますと(皮膚暴露)食物アレルギーを起こしてくるのです。
a)例えばピーナッツオイルをお肌に使用しているお子さんではピーナッツアレルギーが多くなります。(経皮感作)
b)例えば小麦を食べていて全く問題がなかった人が、小麦の入った石けん(茶のしずく石けん)を使ったところ、皮膚から小麦が吸収されて小麦のアナフィラキシーショックを起こしました。(経皮感作)
I離乳食が始まる前に皮膚がカサカサしていますと、経皮感作が起こります。
J経母乳感作?
母乳は赤ちゃんが飲んでいるので、これがすでに経口免疫寛容の状態で、母乳を飲んでも赤ちゃんはアレルギーにはなりません。
母乳の中にはアレルギーを抑える物質が入っていますので、この母乳を食物と一緒に赤ちゃんが食べることで、赤ちゃんが免疫反応(アレルギー)を起こすのを抑えてくれます。
経口免疫寛容は食べた方が治るということにもなる可能性があります。
K急速特異的経口耐性誘導
a)入院しての治療ですが、例えば卵アレルギーのあるお子さんに1日何回も卵を少量から与え始めて、日毎に増やしていき最終的には加熱して卵を1個たべれるようになるものです。(平均14日間で可能になります。)短期間に集中しておこなわれる治療です。
この治療中にみられる食物アレルギーの症状は軽いものがほとんどで、アナフィラキシーのような重症の症状はみられません。(卵・ピーナッツ・小麦)
ただし牛乳の場合少し症状は重く出ることがあります。
b)急速免疫寛容治療で食物が食べられるようになっても、その後もその食物を食べ続けることが必要になります。
そうしますと血液検査の食物のIgE値(アレルギーの反応を示すものです)が次第に下がってきます。
c)急速免疫寛容治療の成功率は100%です。
日常生活で食べれるようにするのが100%です。
d)急速免疫寛容治療はピーナッツアレルギーの場合はピーナッツのIgE値が一時的に上昇しますが、その後に次第に下がってきます。
L緩徐特異的経口耐性誘導
a)例えば卵アレルギーのあるお子さんに卵を1日1g食べてそれを一週間継続して、症状が出なければ30%増やして一週間継続します。
このように少量をゆっくり時間をかけて食べる治療法です。
大豆アレルギーなら味噌・しょうゆ・納豆を食べてみるのです。
b)例えば血液検査でIgE値も高値で食物に対してのIgE値も高値であっても、少しずつ食べてみれば意外に食べられるようになるのです。「ちょっとずつ」食べてみるとよいのです。
この時に皮膚にアトピー性皮膚炎がある場合はステロイドの塗り薬の治療でアトピー性皮膚炎を良くしておくとIgE値も食物に対するIgE値も下がってきます。
M妊娠中のお母さんの食物除去は不要です。
N授乳中のお母さんの食物制限は赤ちゃんのアトピー性皮膚炎を悪化させることはありません。
Oピーナッツアレルギーはピーナッツを赤ちゃんの早い時期から食べていると起こしにくい傾向がみられます。
つまり、食物はなるべく離乳食時期から始めると食物アレルギーを起こしにくくなるのです。
P食物アレルギーで最も大切なことは
a)適切なステロイドの塗り薬を使用して皮膚のバリア機能を改善することです。
アトピー性皮膚炎が適切に良い状態にコントロールされていないと食物アレルギーには良くありません。
b)積極的に食物を口から食べることです。食べて治す食物アレルギーということです。
Q母乳と人工栄養(ミルク)はどちらがアレルギーを起こしやすいかの結論は出ていません。
R生後2週間から人工栄養(ミルク)を初めているとミルクアレルギーは起こしません。
S乳幼児の「いくらアレルギー」がとても増えています。
赤ちゃんにちょっとだけ周囲の人が「いくら」を与えると、アレルギーを起こしてしまう可能性があります。
㉑「そばアレルギー」はそばの粉を吸い込むとアレルギーを起こしてきます。
㉒「魚アレルギー」はちょっとずつ魚を食べてみるとアレルギーを起こさなくなります。
ただし魚そのものに手で触れないことが大切です。
㉓卵アレルギーで卵を除去しているお子さんには、卵ボーロをちょっとだけ食べて、症状が出なければ少しずつ食べる量を増やしていけば良いのです。
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