小児アトピー性皮膚炎に対するProactive Therapyの有効性
TARCを指標に加えた治療戦略
成育医療研究センター 大矢 幸弘先生講演会より
@かゆみによる睡眠障害は皮ふからの体液の漏出による成長障害がありますので、ステロイドの塗り薬が重要になります。
A成長期(30才以上)のアトピー性皮膚炎が増えています。
アトピー性皮膚炎がこどもの病気だったのは昔のお話です。
Bアトピー性皮膚炎は小児が34.7%・成人が65.3%の割合になっています。
Cアトピー性皮膚炎が大人になると自然に治るというのは間違いです。
D1980年〜1990年代のステロイドバッシング(ステロイドを使用しないでアトピー性皮膚炎を治すという考え方)
全盛期時代のお子さんが成人になり、脱ステロイド療法を続けている結果として、治らずに苦しんでいる20代〜40代の大人のアトピー性皮膚炎が多いのです。
Eアトピー性皮膚炎は小児期に皮膚を良い状態に治療して、それを維持することが大切なのです。
F適切な強さのステロイドの塗り薬を、適時連日塗れば必ずアトピー性皮膚炎の発疹は消失するのです。
Gステロイドの塗り薬を塗っても良くならないケースは、アトピー性皮膚炎以外の病気の可能性を考える必要がありますし、あるいは入院治療が必要です。
アトピー性皮膚炎が重症な時には入院してしっかり治療するのです。
HProactive療法
1)初めにステロイドの塗り薬を塗ってアトピー性皮膚炎の皮膚の発疹を消失させてから、次は週に2回位ステロイドの塗り薬を塗っていると重症のアトピー性皮膚炎に効果があります。
2)タクロリムスの塗り薬を6週間連日塗ってアトピー性皮膚炎の発疹が消失したら、タクロリムスの塗り薬を週に2回予防的に塗っておきますProactive療法の方が、Reactive療法(アトピー性皮膚炎の発疹が出た時だけタクロリムスの塗り薬を塗る治療法)よりも再発が少なく、皮膚の
良い状態を維持することが出来て、さらにさらに再発までの期間が長いのが特徴です。
3)ステロイドのProactive療法でも同様に、Reactive療法よりも再発が少なく皮膚の良い状態が維持することが出来ます。
ステロイドの塗り薬もアトピー性皮膚炎の発疹が出た時だけ塗るReactive療法ではなく、皮膚の状態が良い時でも週に1〜2回ステロイドの塗り薬を塗っておくProactive療法の方が良いことになります。
4)アトピー性皮膚炎の発疹を消失させるための初めに使うお薬はステロイドの塗り薬の方がタクロリムスの塗り薬よりも効果は高い傾向があります。
5)Proactive療法は、タクロリムスの塗り薬でもステロイドの塗り薬でもどちらでも有効です。
6)ステロイドの塗り薬で始めるProactive療法の方がアトピー性皮膚炎の発疹を消失させる確率が高く、予防にも良いことがわかってます。
7)Proactive療法をしている時の方が、アトピー性皮膚炎が再発した時の改善が良い傾向があります。
8)Proactive療法はステロイドやタクロリムスの塗り薬を、アトピー性皮膚炎の発疹が消失するまで連日塗ります。
その後にステロイドやタクロリムスの塗り薬と保湿剤を隔日に交互に塗ります。
この状態で皮膚が良ければ、ステロイドやタクロリムスの塗り薬を3日に1回の塗り方に変更します。
つまりステロイドやタクロリムスの塗り薬を1日塗ったら、2日目と3日目は保湿剤を塗るのです。
このようにしてステロイドやタクロリムスの塗り薬の塗る間隔をゆっくりと空けていくProactive療法が有効なのです。
9)Proactive療法の方がReactive療法よりも伸長の伸びも良く、血液検査のアレルギー要因を示すIgEの値も下がってきます。
10)Proactive療法をしたお子さんは卵白アレルギーのIgEや牛乳アレルギーのIgEの値が下がってきますが、Reactive療法ではこの傾向はみられません。
これはProactive療法の効果で、皮膚から食物が侵入して食物アレルギーを起こす機会が減るためです。
皮膚がツルツルの良い状態だと食物アレルギーの原因食物が皮膚から入ってこないのです。
11)Proactive療法を成功させるためには、見ても触れても湿疹が「ゼロ」の状態(皮膚がツルツルした状態)にしてから、Proactive療法を開始すると良いのです。
ITARC
1) 皮膚が良い状態を維持出来る指標として血液検査の「好酸球数」や「LDH」や「TARC」がありますが、TARCが最も鋭敏な指標になります。
2)アトピー性皮膚炎の重症化に伴って「TARC」の値が上昇します。
3)アトピー性皮膚炎が改善してくると上昇していた「TARC」の値が下がってきます。
4)皮膚の状態だけでなく血液検査によって「TARC」を測定することで、アトピー性皮膚炎が改善しているという客観的な判断が出来ます。
5)皮膚の状態が良くなりますと、血液の「IgE」や「TARC」の値も下がってきますが、「TARC」は健常者の値(125くらい)まで下がってきますが、IgEは下がってきても健常者の値までは下がりません。
6)「TARC」は乳児は基準値が高く「500〜1000くらい」で5才以降は「400くらい」が正常の基準値となります。
Jアトピー性皮膚炎は自然に治るとは限りません。
成人の重症のアトピー性皮膚炎の多くは乳児期の発症です。
K乳児期のアトピー性皮膚炎は食物が皮膚から侵入して食物アレルギー招く恐れがあります。
Lアトピー性皮膚炎の「かゆみ」による「睡眠障害」が成長抑制を招く恐れがあります。
Mアトピー性皮膚炎の皮膚からの体液の漏出は低タンパク血症や低ナトリウム血症や下痢・発達障害を招く恐れがあります。
<<戻る
<<TOP
(c)たんぽぽこどもクリニック