アトピー性皮膚炎の管理
〜神奈川県立こども医療センター 馬場 直子先生講演会より〜
@アトピー性皮膚炎とは〜
a)かゆみのある湿疹です。
b)悪くなったり、良くなったりを繰り返しています。
c)生まれつきの素因をもっています。
A貨幣状の苔癬化型のアトピー性皮膚炎(island type)は、島状に部分的にアトピー性皮膚炎がみられているために
真菌(カビ)と間違われることが多いので、注意が必要です。
Bアトピー性皮膚炎のお子さんの爪がピカピカ光っていたり、爪が短くなっている、爪を切ったことがないといったことがある場合は、お子さんはかなり頻回にお肌をひっかいているサインとなります。
Cアトピー性皮膚炎の原因は
a)アレルギーが関与しています。
b)皮膚のバリア機能障害(お肌を守る力が、低下しています。)があります。
例えばドライスキン(乾燥肌)もその一つです。
Dアトピー性皮膚炎の治療は
a)アレルギーの原因となるアレルゲンの回避です。
b)スキンケアです。
Eスギ花粉で、顔にアトピー性皮膚炎が出るお子さんがいます。
F日光で日焼けして、顔にアトピー性皮膚炎が出るお子さんがいます。
Gドライスキンがありますと、かゆみを感じる神経が皮膚の浅いところに伸びてきて、かゆみを感じやすくなっています。
Hアトピー性皮膚炎は、体の中でも出っぱっているアゴやオデコに湿疹が出やすい傾向にあります。
Iアトピー性皮膚炎のスキンケアは
a)皮膚を清潔にするスキンケアが大切です。石けんで洗うことが重要です。
b)皮膚をこすりすぎると、皮ふのバリア機能が壊れてしまうので、基本はこすらず、優しく洗うことが重要です。
c)バスタブに浸かると、かゆみが増してしまい、皮膚を守っている皮脂膜も落としてしまうので、熱いお湯は避けて、シャワーが良いと思われます。
d)入浴後15分くらいで、保湿剤を塗ると良いでしょう。こすらず、優しく、たっぷりと塗ると良いでしょう。
e)保湿剤はお肌の「水分保持」、「バリア機能の補強」、「軟化しやわらかくする作用」があります。
f)尿素製剤の塗り薬は、お肌のバリア機能を破壊してしまうことがありますので、 アトピー性皮膚炎ではあまり使わない方が良いでしょう。
g)食物アレルギーも皮膚から食物が侵入しておこることが多いので、スキンケアは重要になります。
h)食物アレルギーも気道アレルギー(ぜん息)も、皮膚からアレルギーの原因であるアレルゲンが侵入しておこるのではないかと考えられています。
i)ピーナッツアレルギーは、母乳中のピーナッツではなく、家庭内のハウスダストの中のピーナッツ含有量によって食物アレルギーがおこっています。
j)アトピー性皮膚炎が重症のお子さんでは、ステロイドの塗り薬を塗った後にその上から亜鉛華単軟膏を重ねて塗り、その上からカーゼ等で被うと効果が上がります。
この様に湿疹の部分を被うことで直接かかなくすることが出来て、局所のひどい苔癬化や顔のびらんに効果があります。
k)重症のアトピー性皮膚炎では、初めにステロイドのぬり薬を使い、すこし良くなったらプロトピック軟膏へ変更すると良いでしょう。
さらに良くなりましたら、「プロトピック軟膏」か「ステロイドのぬり薬」を週1日だけぬり、残りの6日は保湿剤にする「プロアクティブ療法」が良いでしょう。
プロアクティブ療法とはアトピー性皮膚炎の再燃が少ない治療法ですので、より良いアトピー性皮膚炎の治療と言えます。
この治療をしたときには、最低でも6ヶ月は継続が必要です。
6ヶ月を過ぎましたら、週1日塗っていたプロトピック軟膏を止めてみて、アトピー性皮膚炎の症状が出てくる場合は継続が必要です。
症状が出なければそのまま中止して、保湿剤だけで良いでしょう。
l)1日2回の保湿剤をぬっておきますと、全く保湿剤をぬらないお子さんに比べ、アトピー性皮膚炎の再燃を抑制することができます。
お肌の調子が良い時でも、保湿剤を塗っておくことが大切です。
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